那覇市繁多川に住む下地盛雄さん(82)が約60年にわたり運営してきた三原、繁多川の2カ所の珠算塾を孫の世翔(せすな)さん(25)が引き継ぎました。世翔さんは「地域に根ざしたそろばん塾を続けていきたい」と、繁多川と三原公民館でそれぞれ週3回の珠算塾を開いています。スマートフォンの普及もあり、誰もが電卓ソフトを操作できる時代にあって、あらためてそろばんの魅力についてお2人に伺いました。
今年83歳になる盛雄さんは宮古島市平良生まれ。高校時代にそろばんを覚え、卒業後島を出ると、珠算技能を生かし国場組やオキコなど県内企業で会計事務を担当してきました。
仕事の傍ら、住んでいた地域の子どもたちにそろばんを教えることを思い立ち、20代後半から公民館で教室を開いてきました。盛雄さんは「あの頃はかやぶきの公民館。知り合いに声を掛け10人余りの子どもに教えることから始めました」。長年、夫婦二人三脚で珠算塾を営んできました。
孫の世翔さんはそんな祖父の影響もあって、小学生の頃からそろばんを習い始めました。ただ、習い始めてしばらくは「電卓があるのに、なぜそろばんをやらないといけないのか」と疑問や不満も正直あったそうです。しかし珠算技能が威力を発揮したのは中学に入ってからのこと。「他の友達より圧倒的に算数のテストを終えるのが速かった。そろばんをやっていて良かったと思いました」と世翔さん。
高校に進学してからも、理数科目にはめっぽう強く、特に計算量が多い物理では他の生徒と差を付けることができたそうです。
「暗算が速いと理数系に強くなり、大人になっても一生モノの力になる」「一度覚えたらなかなか忘れない。忘れてもすぐに勘を取り戻すことができる」と、そろばんの魅力を語ります。そろばんは右脳を使うそうで、脳の活性化にも良いといいます。
そろばんの可能性に気付き、子どもたちに珠算技能を身に付けてほしいと2019年8月、祖父から珠算塾を引き継ぐことを決意した世翔さん。塾には地域の年配の人が「昔ここでそろばんを習っていました」と訪ねてくることも。また最近は教え子の女の子が「将来はそろばんの先生になりたい」と言ってくれるようです。
世翔さんの目下の目標は、塾経営者として全国珠算大会で表彰者を輩出すること。「地域に根差した珠算塾として長く運営していきたい」と意気込んでいます。
珠算塾への問い合わせは世翔さんまで。電話080(1799)5797。
(文/写真・城間陽介)